広告制作の源流:僕のクリエイティブシンキングⅡ


逆境に打ち勝つ。常識に囚われず、己の強みを信じる。

1998年の始めに、アップルコンピュータは、“Think different”(発想を変えよう)の企業広告によって、全世界で統一したイメージとメッセージを発信し始めました。

現状も全世界的には変わりませんが、マイクロソフトがほとんどのシェアを占めて、アップルは風前の灯だったといわれています。

スペック、性能、シェアでは勝てない。そこでPC、ITメーカーとしては考えられなかったことですが、ライフスタイルを強みとしたアプローチを試みたのです。

このキャンペーンは、「世の中を変革し、よりよい世界にしようと情熱を抱くクリエーティブな人たち」をテーマに、ピカソやアインシュタインなど二十世紀を代表する人物の顔写真を使って発想やものの見方を変えることを訴えました。

その後に出たi-Macなどの商品性とあいまって、オシャレである、イノベーティブである、クリエイティブである、といったブランド価値を確実に醸成していったと思います。

PCがメインでありながら”Spec・性能訴求を捨てた”という、まさに“Think different”なキャンペーンだったと思います。

think differentの新聞広告

広告史に輝く名作を見てみる~フォルクスワーゲンの新聞広告~

次にさらに時代を遡って、広告史に輝く名作を見ていきます。1950~60年代にDDBという会社がつくった、アメリカでのフォルクスワーゲン(VW)の新聞広告です。当時のアメリカは好景気。大排気量でガソリンを湯水のように使って走る大きな車が主流でした。

こんな車。

アメリカ車

アメリカ車
この状況の中でVWビートルという小さな車を売らなくてはいけない。まさに難題を抱えたのです。まさに「発想を変える」広告が必要だったのです。

その広告がコチラです。コピーの和訳付きでどうぞ。

20071115042700不良品

このVWは船積みされませんでした。

車体の1ヵ所のクロームがはがれ、 しみになっているので取り替えなければならないのです。 およそ目につくことがないと思われるほどのものですが……K・クローナーという検査員が発見しました。

当社のウルフスブルグの工場では3,338人が一つ作業にあたっています。VWを、 生産工程ごとに検査するために、です。(日産3,000台のVWがつくられています。だから車より検査員の方が多いのです。)

あらゆるショック・アブソーバーがテストされます(部分チェックではだめなのです)。ウインドシールドもすべて検査されます。何台ものVWが、とうてい肉眼では見えないような外装のかすり傷のために不合格となりました。

最終検査がまたすごい!VWの検査員は1台ずつ車検台まで走らせていって、188のチェック・ポイントを引っぱりまわし、自働ブレーキスタンドへ向けて放ちます。それで50台に1台のVWに対して「ダメ」をだすのです。

この細部にわたる準備が、他の車よりもVWを長持ちさせ、 維持費を少なくさせるのです。(中古VWが他の車にくらべて高価なワケもこれです)。私たちは不良品をもぎとります。 あなたはお値打ち品をどうぞ。

 

きれいな製品の写真を出して「不良品」、と打ったのです。提案する方もすごいし、受け入れたVWもすごいと思います。もちろん訴求しているのは、品質、なんですけどね。

当時は、大量生産のはしりで、売れまくっていたから、アメ車の品質もかなり悪かったんだろうと思います。そこに付け入る隙を見つけた。しっかり自社の強みと弱みを分析した広告だったわけです。

もちろん手法論としては「ネガティブアプローチ」として知られているものですが、ここまで大胆に、大見得を切った広告は昨今含めてありません。

 

カウンターカルチャーを創る。流行を逆転する。

もう1本、名作をご紹介します。

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小さくやってみよう。

きっちりつめたら、 ニューヨーク大学の18人の学生がサン・ルーフVWに乗れました。フォルクスワーゲンは、 家庭向きに考えて大きさが決められています。おかあさん、おとうさん、 それに育ちざかりのこども3人というのが、 この車にふさわしい定員です。

エコノミイ・ランで、 VWは 1リットルあたり平均21km強の記録を出しました。あなたには、ちょっと無理な数字です。プロのドライバーは商売上のすてきな秘けつを持っているんですから(お知りになりたい?ではVWBox #65 Englewood, N.J.へお手紙をどうぞ)。

ガソリンはレギュラー、また、オイルのことは次の交換時期までお忘れください。VWは在来の車より全長が4フィート短くできています (とはいっても、 レッグ・ルームは同じくらいあります)。ほかの車が混雑したところをぐるぐる巡りしている間に、あなたはほんの狭い場所にも駐車できるんです。

VWのスペア部品は格安です。新しいフロント・フェンダーは(VW特約店で)21.75ドル、シリンダー・ヘッドは19.95ドル、品質がよいのでめったに必要とはしませんが。

新しいフォルクスワーゲン・セダンは1,565ドル、ラジオ、 サイド・ビュー・ミラーのほか、あなたがほんとうに必要なものは全部ついています。1959年には、12万人のアメリカ人が、小ささを考えてVWを買いました。ここのところを考えてみてください。

 

こちらは、わりとストレートに新しい価値観を提示した物ですね。「大きいことはいいことだ」という世の中に、堂々反旗を翻した。

これらが、業界にセンセーションを巻き起こし、世の中の価値観を変えた、半世紀を経ても広告史の名作とされたキャンペーンです。コレに匹敵する物を見たことはありません。ボルボの環境広告以外は。。。。次回に。

参考:ペンブックス10 広告のデザイン