ほんの記録-1。フィリップ・マーロウに憧れて。


10年ほど自粛していた読書を、コロナを機に再開したCD佐藤です。

アメリカ生まれの小説家、レイモンド・チャンドラーが生み出したハードボイルド小説の主人公、なぜか葉山のプリン屋さんの名前の由来にもなっている探偵、フィリップ・マーロウ。

If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.

「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」清水俊二訳
「ハードでなければ生きていけない、ジェントルでなければ生きていく気にもなれない」矢作俊彦訳
「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。 優しくなれないようなら、生きるに値しない」村上春樹訳

彼の名セリフを、何度コピーでパクってボツにされたか。

「愛を持たずに書いてはいけない。やさしくなれないようなら、文章を書く資格がない」

これは30年以上前に教えられた、物書きの基本。
読み手の気持ちを考えずに自己中心的な文章を書き散らかしたら、炎上するのは当然です。

 

閑話休題、レイモンド・チャンドラーが書いた小説は、7作の長編(他に短編集・途中まで書いたものもアリ)が双葉十三郎訳と清水俊二訳で出版されており、ハードボイルド小説のマスターピースとして学生時代から愛読していたのですが、全て1950年代までに出版された古い翻訳ものだったこともあって、十数年前にアメリカ文学オタクの村上春樹が改めて翻訳をし直し、昨年末に最後の7作目が文庫化されたのを機会に、再度全巻、通読してみることにしました。

ハードボイルド調の文体って、ちょっとすかした文章になりがちで、日本語訳にするとさらにそれが強まって(って、英語読めませんが・・・)、よっぽどうまく書かないと読んでる方がはずかしくなります。

例えば

ハードボイルド? そういえば、流行ったこともあったようだ。
ヘミングウェイ、ハメット、パーカー、ブロック…
そんな昔のことは覚えていないね。

なんていうふうに「カサブランカ」の名セリフをパクってみても、うすら寒い文章になってしまいます。

とはいうものの、コピーライターの大御所、秋山晶は、かつてハードボイルド調のコピーを武器に、最前線で活躍していました。

彼の書いたキャッチコピー

“少年はだれでも幻の女を持っている。”

実はこれ、マヨネーズのキャッチコピーです。
半世紀前はちょっとカッコよかったかも知れないけれど、いま読むとコミュニケーションの距離が遠すぎるかな。
ちなみにコピーにある「幻の女」は、ミステリー小説の古典的名作のタイトルを引用したものだと思われます。

 

さすがに村上春樹訳は、もともと彼の文章は、レイモンド・チャンドラーにも影響を受けた、読んでいてちょっとこそばゆくなる英文翻訳風なので、ハードボイルド調の違和感はなく、いま風で読みやすく、それでいて品のある日本語になっています。

というわけで7冊全部そろえたものの、梅雨時から夏に向けて読むには不向きなちょっと暑っ苦しい内容なので、秋までとっておくことにします。

かわりに読んだ本については、ほんの記録-2にて。